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MUSUBU プロジェクト秘話

日本の職人が守る「ベジタブルタンドレザー」

17-01-26

Knotのレザーストラップにも採用されている、ベジタブルタンドレザー。植物から採れるタンニンで鞣されたレザーで、革らしい質感や優れた耐久性、弾力性が魅力です。しかし「タンニン鞣し」は主流の「クロム鞣し」よりも手間やコストがかかるため、いまや全革製品製造のうち2割にまで減少しています。それでも、いくつかのメーカーが一途に製法を守り、100年以上にわたって受け継がれてきました。その深い魅力に迫ります。

動物の「皮」を美しい「革」に変身させる、鞣しの技術

大昔、人間が寒さから身を守るため、狩猟した動物の皮を防寒着に利用した時から人間とレザーの歴史は始まりました。はじめは動物から剥いだ皮をそのまま使っていましたが、皮は放っておくと腐敗したり水分が抜けて固くなったりするため、煙で燻したり、草や木の汁に漬け込むなど、使いやすさを求めてさまざまな工夫が行われるようになります。こうして動物の「皮」を、使いやすく美しい「革」にする鞣しの技術が発達し、鞣し剤を革の繊維と結合させることで、柔らかく丈夫なレザーが作れるようになりました。

日本にはまず、鞣し剤に塩基性硫酸を使用する「クロム鞣し」が伝わり、その約20年後の1869年に草木の中に含まれるタンニンを使用する「タンニン鞣し」が伝わりました。現在、革製造のうちの8割が「クロム鞣し」によるもので、残りの2割が「タンニン鞣し」によって作られています。「タンニン鞣し」の発祥は古く、最古の製品は古代エジプトからといわれています。

タンニンで鞣され、しっかり乾燥させたベジタブルタンドレザー

そもそもタンニンとは、植物に含まれる「渋」のことで、タンニンと皮の繊維であるコラーゲン(たんぱく質)をじっくりと結合させることで、革にハリやコシが生まれるようになります。「タンニン鞣し」で加工されたベジタブルタンドレザーは、使い込むうちに革ならではの色や質感の経年変化が楽しめるといわれています。

しかし天然素材を使用し、丁寧に鞣し作業を行う分、製造には原皮から着色の加工まで半年を要し、人件費や設備コストも多く必要になります。こうした理由から、「タンニン鞣し」にこだわる多くのタンナー工場は時代とともに潰れていきました。しかし、いまでもいくつかのレザーメーカーが「タンニン鞣し」の製法を頑なに守り続け、100年以上の間途切れることなく受け継がれてきました。

ベジタブルタンドレザーを生む、こだわりの20工程

塩漬けされた原皮をドラムで水洗いしているところ

工程を大きく紹介すると、まず、塩漬けされて届いた牛や馬の原皮を超大型ドラムで24時間「水洗い」し、塩分や汚れを落として水分を含ませます。次に「石灰漬け」により脱毛を促してコラーゲン繊維をほぐし、皮の内側についている余分な脂肪や汚れを「フレッシング」と呼ばれる作業で落とします。さらに、その後の鞣し作業をスムーズにするため、脱灰・酵解で皮を中和してから、植物タンニン溶液でなめす「ベジタブルタンニン鞣し」の工程に入ります。鞣したあとは、良質な油を加えて柔らかく艶のあるレザーに仕上げ、マシンで革を伸ばす「セッター」作業や「乾燥」を行っていきます。染色を行う場合は、再びなめし作業やセッターなどの手順を繰り返して、ようやく出荷されます。

革をマシンで伸ばすセッター作業の様子

鞣し作業は、ドラムといわれる機械を使って革にアクションを与え、2〜3日でタンニン剤を浸透させる方法や、より革の質感にこだわるため1ヶ月ほど槽につけ込んでじっくり染み込ませる方法があり、その工場や職人によってこだわり方やポイントはさまざま。ほかにも耐久性や弾力性を上げるため、セッター作業を何度も繰り返す場合もあるといいます。

こうした目に見えない製造過程にまで心血を注ぐやり方はジャパンレザーならでは。基本となる作業工程は同じながら、完成品にこだわり、染色までしっかり行うことの多いイタリアンレザーに比べ、染色をしないヌメ革製品が多く作られているのも、革の素材そのものの魅力を楽しんでほしいという革メーカーの自信ゆえなのです。

こうして職人自身が納得のいくまで丁寧に仕上げられたジャパンレザーは、年単位で耐久性や使い心地に差が表れてくるのだとか。次第にジャパンブランドとして認知されつつある、日本のベジタブルタンドレザー。これからも変わらずに製法を守り続けていってほしいですね。