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MUSUBU プロジェクト秘話

しなやかで艶感の美しい「姫路セミグレインレザー」の秘密

17-05-18

栃木レザーと並び、“国内2大タンナー”と称される姫路レザーの新作が、MUSUBUプロジェクトに登場しました。その革、「セミグレインレザー」は、驚くほどしなやかで柔らかく、奥行きのある控え目な艶で、身に着けるほどに腕になじんでいきます。

製造しているのは、揖保川と林田川という豊かな水脈に恵まれ、姫路レザーの中でも生産が盛んな、兵庫県たつの市松原地区にある木本皮革工業所。色艶はもちろん、見えない中身の品質にまでこだわり続けるタンナーです。

限りなくなめらかに、しなやかに

「セミグレインレザー」とは、牛が生きていた時に受けた傷や皺、毛穴の凹凸などの風合いを残した「フルグレインレザー」をさらに加工して、表面(吟面)を限りなくフラットな状態にした革のこと。手ざわりが優しく、発色が鮮やかで、見る人に上品で美しい印象を与えます。

原皮には、アメリカ合衆国コロラド州フェニックス産のデイリーステア種のものを採用。肌目の優しさと柔軟性に富み理想的なセミグレインレザーを作ることに適しています。 原皮は、7昼夜あまりの時間をかけて様々な工程を経て、毛皮の状態から「ウェットブルー」と呼ばれる、薄い水色の状態に。その後、染織・色付けの工程を経て、金属面の熱を用いて革の表面に平滑性と艶を与えて、塗装膜を固定する「アイロン掛け」が行われます。

「このアイロン掛けが、もっとも大事な工程です。一般的な業者が2~3回行うところを、私たちは6回~8回と行っています。それも軽量級の4トンから重量級の18トンまでの異なる4種類の設備を使い分けて。そうすることで、目に見えないブレを修正していくことができるからです」と語るのは、木本皮革工業所の木本文明さん。アイロン掛けは、温度や圧力、時間によってその効果が異なるので、作業には熟練した職人の腕と勘が必要です。

「しなやかな革は、さわった時にシュッ、シュッという音がするんですよ」と木本さん。Knotのストラップに使われるセミグレインレザーを開発するのに、約半年を要したそう。

出来の良い「サンプル品を1~2度程度再現するのは簡単です。しかし、私たちが目指しているのは、全製品でそのサンプルのクオリティーを再現し続けることです。そのために何度も試作を重ね、品質を安定させる努力をしました」(木本さん)

この“品質を安定させること”こそが、木本皮革工業所がもっとも大事にしているポイントであり、難しい部分でもあります。

欧米の感性と、日本の品質を融合させる

「革の原材料は皮。鉄やプラスチックのような無機物ではなく、有機物です。1枚ずつ毛穴や傷などの状態が違い、背中や足など部位によっても状態が違い、また季節によっても違ってきます。つまり素材としては、とても不安定なんですね。でもだからこそ、製品として品質を安定させ、プロダクトを作る過程での不良率を下げるべきだと考えています。そのために、天然皮革のもつ有機的な手触り感やボリューム感、肌目といった項目を損なうことなく製品を安定させることに徹頭徹尾こだわっています」

そして、この“安定した品質”こそが、メイド・イン・ジャパンの強みだと木本さんは言います。

「もう20年近く年に2回、イタリアで開催される革の見本市『リネアペッレ(LINEAPELLE)』に赴き、トレンドをチェックしていますが、欧米の感性には素晴らしいものがあります。見る人をハッとさせるような感動があるんですね。ただ、サンプルは素晴らしいのですが、製品化された途端、『黄色は美しいけど、緑は何か物足りない』など、品質にバラつきが出るんです。一方、我々は緻密に計算し、何度も検証し、いざ量産を行う段階では、失敗がほとんど発生しないところまでもっていきます。しかし感性で言うと、特にヨーロッパのセンスにはまだまだ及びません」

理想は、“感性”と“品質の安定”の融合

「そのためには日夜、研究と努力ですね。この仕事をはじめて30年あまり。でも、10年後も“完璧な革”にはたどり着かないと思います。それくらい、奥が深い世界です。もし『完璧だ』と思ったら、その時には引退を考えるべきですね。それは職人として、これ以上、進化しなくなるってことだから」

完璧を求める彼らの、ひとつの到達点、「セミグレインレザー」。一度手にとって温もりのあるそのしなやかさ、優しさをさわって確認してみては?