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日本の匠の「物」語り。

久右ヱ門窯「セラミックコーヒーフィルター」

16-12-29

地道な研究と長い経験から生まれた究極のフィルター

一見、普通のカップに見えるこちらの茶色い器。実は、有田焼・久右ヱ門窯から発売されている「セラミックコーヒーフィルター」なんです。セラミックとは、英語で陶磁器のこと。この特別に焼かれたセラミックフィルターに珈琲を入れてお湯を注ぐと、目に見えない小さな孔から砂の隙間から水がしみ出すように液体だけがろ過され、コーヒーや紅茶がドリップされます。セラミックには水をまろやかにしてくれる遠赤外線効果があるため、セラミックによってドリップされたコーヒーは、ペーパーフィルターでドリップしたものに比べて雑味や苦味、渋味などが少なくなり、美味しくなるのだそう。

この世界初の「多孔質セラミックス」技術は、久右ヱ門窯が長年続けてきた素材研究の過程の中で発見されたもの。パウダー状の陶石を原料に使う通常の陶磁器よりも、粗く砕いた加工石を原料に選んで焼き上げることで、60ミクロンの小さな孔が無数にでき、フィルターとして機能するのです。

無数の孔によって目が粗くなるため器の強度が弱くなりやすいのが難点ですが、独自の原料配合によって日常生活でもタフに使用できるように作られています。細かな粉を通さず、液体だけを通すという繊細な孔の調整を行うのは至難の技。長きにわたり陶磁器製造と研究を続け、知識と経験を蓄積させてきた伝統的な窯元だからこそなしえた、MADE IN JAPANの驚くべき技術なのです。

輸出用に改良され、より使いやすく進化

1996年 には「多孔質セラミックスの開発とその応用」が評価され、科学技術庁長官賞を受賞。コーヒーフィルターとして技術が実用化されたのは10年前で、ここ数年は海外からの問い合わせが増加しているそうです。2015年にアメリカのコーヒーサイトに掲載されたことで人気に火がつき、海外で本格的に売り出すべく改良を重ねました。粉の目詰まりを減らすために孔を大きくしたことで、詰まった粉は焼成して取り除けるようなり、半永久的に使えるようになったのです。

こうした製品としてのクオリティの高さが評価され、9月末には本場アメリカ、アナハイムで開催のコーヒーの展示会「coffee fest」への出店も行われました。「現在、サイト掲載の影響もあり、アメリカからの問い合わせが半分以上を占めています。海外で日本の技術やプロダクトが注目されることで、日本国内でも注目が集まればいいなと思っています」とこのフィルターを製作する久保田剛さんは語ります。

世界中で、日本のコーヒーフィルターが認められる日も近いかもしれませんね。



こちらの記事に掲載されている価格は、2022年8月現在の情報です。
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