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日本の匠の「物」語り。

スカーフに生まれ変わった「手ぬぐい」

17-11-11

大切に守り続けてきた、日本独自の注染技法

明治時代初期まで人々の暮らしを支え続けた「手ぬぐい」。しかし欧米から便利なタオルが輸入されるようになり、需要は一気に激減しました。以降、手ぬぐいは“お祭りや町内会の景品”というイメージを纏うようになり、わざわざ購入するものではなくなっていきます。

そんな中、「消えゆく日本の伝統的な手ぬぐい文化を守りたい」という思いを抱き、株式会社かまわぬは、30年前に代官山に「手ぬぐい専門店 かまわぬ」をオープンしました。裏表なく染まる「注染(ちゅうせん)」という技法にこだわり、伝統的な模様をベースに季節の柄や現代的な模様を取り入れながら、店頭販売で常時250柄、年間では約500柄ものてぬぐいを生産しています。

江戸時代までは、絞り染めや型染めという手法が一般的でしたが、江戸時代末期に注染の技法が登場。一度に20〜30枚を刷れる画期的な染色法として、明治初期から一気に広まっていきます。染め方は、真っ白な木綿の反物に型紙を使って糊付けを行い、片面に染料を流して色付けし、下まで浸透させます。さらに布を裏返して色付け作業をもう一度行うことで、裏表のない染め生地が完成するのです。そんな日本ならではの繊細な技法を守るため、かまわぬは今でもすべての工程を手作業で行っています。

使うほどに体に馴染む優しいコットンスカーフ

かまわぬが一番大切にしている思いが、「使ってもらうこと」。そのために、かまわぬではさまざまな用途を提案してきました。手を拭くためだけでなく、キッチンクロスやテーブルマット、プレゼントを包むラッピングクロスとして使える大きさ違いの商品を販売したり、店頭でもさまざまな使い方を伝えているそう。代官山の日本家屋を思わせる「かまわぬ本店」には、ヨーロッパやアジアの観光客がより日本らしいものを求めてたくさん訪れます。ただ、飾るためやハンカチとして購入することはあっても、布地を多目的で臨機応変に使うことは文化的に受け入れづらいという背景がありました。

外国の方々にも手ぬぐいの魅力をもっとわかってほしいという思いが高じ、かまわぬは2014年に欧米向けの新ブランド「SCARF BY KAMAWANU」を立ち上げました。デンマークを拠点に日本の老舗メーカーとコラボレーションを続けてきた世界的デザイナートーマス・リッケとともに、注染による良質なコットンスカーフを開発したのです。デザインは自然の穏やかさと美しさをテーマにした色柄をセレクト。洗うたびによりやわらかな肌触りになり、色が落ちて風合いも増していくコットンスカーフは、使っていくうちにどんどんと体に馴染み、これまで手ぬぐいとはまったく違った感覚で楽しむことができます。

その後、ドイツのフランクフルトで行われた世界最大規模の国際見本市「アンビエンテ」や、パリで行われたトレードショー(メゾン・エ・オブジェ)にて新ブランドを発表。現在では、ヨーロッパやオーストラリアのデザインミュージアムやインテリアショップなどで実際に販売されています。

少し視点を変えるだけで、日本の伝統的なプロダクトも海外の文化に馴染むということを証明してくれた「SCARF BY KAMAWANU」。手ぬぐいが日本を代表するプロダクトになる日も近いかもしれませんね。

 



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