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腕時計のオーバーホールとは?定期的に実行する必要性と修理との違い

19-01-29

腕時計はどんなに大切に扱っていても、長年の使用により、時計の内部に劣化や摩耗が発生します。時計を長く愛用するには、日々のお手入れはもちろん、定期的にオーバーホールを行い、故障を未然に防ぐことが大切です。では、腕時計のオーバーホールとは一体どのようなことをするのでしょうか。この記事では、オーバーホールに関する基礎知識や作業内容、依頼するときのポイント、費用などをご紹介します。

【目次】
1.オーバーホールの基礎知識
2.オーバーホールの流れ
3.時計をオーバーホールするときのポイント
4.オーバーホール料金の目安
5.オーバーホールで愛用の腕時計をいつまでも大切に

オーバーホールの基礎知識

お気に入りの腕時計を長く愛用するためには、定期的にオーバーホールを行い故障や不具合がないか適宜チェックしましょう。ここでは、オーバーホールの必要性と修理との違いをお伝えします。

●オーバーホールとは?
オーバーホールとは、時計が正常に動くように、すべての部品を分解してメンテナンスをすることです。時計内部にあるいくつもの部品を細かく点検し、破損したパーツの修理や交換、洗浄などを行います。腕時計だけでなく、バイクや車のエンジン、トランスミッション、ピアノやサックスなどの楽器類を分解して内部を掃除することもオーバーホールと呼びます。
腕時計にはクオーツ機械式をはじめさまざまな種類がありますが、ゼンマイを動力とする機械式の腕時計は構造が複雑で、時間の経過とともに防水性などの性能や時刻の精度が劣化していきます。そのため、時計を長持ちさせるには、3~4年程度を目安にオーバーホールに出すのが望ましいとされています。クオーツ式の腕時計であっても、時計内部の部品は使用するうちに劣化していきますので、ブランドが推奨するタイミングでオーバーホールに出すと良いでしょう。 また、機械式・クオーツ式を問わず、仮に動作に異常がなかったとしても、腕時計の内部で部品の劣化や消耗が進んでいることがあります。その場合でもやはり3~4年に一度はオーバーホールをすることをおすすめします。オーバーホールをすると、時計のコンディションをベストな状態に戻せるので、寿命を延ばすことにもつながります。

●オーバーホールと修理の違い
オーバーホールは、時計の部品をすべて分解し隅々まで洗浄や点検を行って本来の動作を取り戻すことが目的です。点検の結果、異常が見つかれば修理や部品交換をすることもありますが、基本的には元のパーツを洗浄して使います。 一方、修理は時計に何らかのトラブルが起こったときに、不具合のある部品だけを直したり、交換したりする作業がメインです。オーバーホールのように時計を完全に分解して部品一つ一つを細かくチェックすることはありません。

オーバーホールの流れ

オーバーホールは状態チェックからメンテナンス終了まで多くの日数を必要とします。オーバーホールがどのような流れで進むのか、一般的な工程と方法をご説明します。

●オーバーホールの基本的な流れ
(1)作動性と外観の状態をチェック
腕時計を分解する前に、外観から状態を調べる。作動性や防水機能、ガラスやバックル、ストラップの傷の程度などを確認する

(2)ムーブメントの分解
専用の工具で裏蓋を開け、ムーブメントを分解する。各パーツに異常がないか細かくチェックし、不具合箇所や交換・調整が必要な部品を探し出す。

(3)部品の修理・交換
前工程で特定した不具合箇所の修理、調整を行う。劣化しているパーツがあった場合は、部品を交換する。

(4)部品の洗浄
分解したムーブメントや時計のパーツは、特殊な器材を使って、薬品や洗浄方法を変えながら汚れを落とす。これにより劣化した潤滑油や摩耗粉などの汚れが落ち、新品に近い状態にまで戻る。

(5)研磨・組み立て・注油
ケースやブレスなどのパーツは研磨し、洗浄が終わった部品は注油しながら組み立てていく。オイルの種類や量、注油する箇所はそれぞれ異なるため、メーカーによって定められた基準に基づき行う。

(6)ケーシング・性能チェック
外していた文字盤をムーブメントに取り付けたあと、針をセットして研磨したケースに収める。時計の外観や防水性などをチェックし、合否判定を行う。

(7)動作テスト
ケーシングが終わったら、針回し、日付変更、運針具合、ゼンマイの巻き上げといった動作の最終検査を行う。すべてのチェック項目をクリアできれば、オーバーホール完了。

時計をオーバーホールするときのポイント

オーバーホールを行うにあたって、注意しておきたい点が大きく3つあります。いずれも大切なポイントなので、オーバーホールを依頼する前に頭に入れておきましょう。

●動作不良がある場合は原因や状態を報告する
水没や落下などにより不具合を起こしている腕時計をオーバーホールに出すときは、依頼時に「何が原因か」「いつから動作異常が見られるのか」「どんな状態なのか」などの情報をメーカーや時計修理店に伝えておくことが大切です。事前に不具合の内容がわかっていると、オーバーホールがスムーズに進みます。また、時計の表面の細かい傷は研磨することで新品のように目立たなくなりますが、思い入れがあって残しておきたい部分は、「この傷は残したい」と伝えておけば要望通りに仕上がります。

●代わりの腕時計を用意する
オーバーホールは、部品一つ一つを精査し正常に動作するか入念な確認が行われるので、状態チェックからメンテナンス完了まで多くの日数が必要です。複雑な機能が搭載されたものや、交換部品の取り寄せが必要な場合は、完了まで1カ月程度かかることもあります。腕時計をオーバーホールに出している間は、時計なしで生活することになるので、仕事などで必要な人は、代わりの腕時計を用意しておくようにしましょう。

●費用の見積もりをもらう
動作不良や見た目でわかるような破損がなくても、時計を分解してから不具合箇所が見つかる場合があります。つまり、オーバーホールにかかる費用は、時計の内部を確認するまでわからないというわけです。見積もりをもらわずにオーバーホールを行うと、想定していた金額を大幅に超えるケースもありますので、分解後に見積もりを依頼して内容と費用をきちんと確認してから、正式にオーバーホールを依頼するのが良いでしょう。見積もりがあれば、事前にどれくらいの費用がかかるかを把握でき、トラブルを防げます。提示された金額に納得ができなければ、ほかの修理店や専門店への依頼を検討しても良いでしょう。

オーバーホール料金の目安

腕時計の種類によってオーバーホールにかかる費用は異なります。では、どのくらいの価格を想定しておけば安心なのでしょうか。オーバーホールの料金の目安をご紹介します。

●オーバーホールにかかる費用
オーバーホールにかかる費用は、腕時計のモデルやムーブメントの構造、時計内部に使われている部品によって大きく変わります。メカニズムが複雑な時計ほど費用は高額になり、シンプルなものは比較的リーズナブルです。クオーツ式、手巻き時計、自動巻き時計、クロノグラフの順に高額になっていくのが一般的です。
また、修理箇所や交換場所によって追加料金の額が定められている場合が多いので、劣化部品が多いとその分費用も高額になります。時計を分解して異常がなく、洗浄や動作テストだけで済む場合は、基本料金だけで済むこともあります。

●Knotのオーバーホール料金の例
Knotでは、機械式時計のみオーバーホールを受け付けています。例として、2つのパターンのオーバーホール料金を取り上げます。

・例1)機械式時計(AT-38)の料金(部品修理・交換なし)
部品の修理、交換なしの場合は、オーバーホールの基本料金15,000円(税別)となります。なお、モデルや有する機能によっても基本料金は変わるので注意しましょう。

・例2)機械式クロノグラフ(ATC-40)の料金
ATC-40の場合は、オーバーホール料金35,000円(税別)となります。このほか、リューズ交換が必要な場合は基本技術料金と部品代合わせてプラス16,000円です。

オーバーホールで愛用の腕時計をいつまでも大切に

オーバーホールとは、人間でいう健康診断のようなものです。普段はケアできない時計内部の状態をチェックすることで、不具合箇所の早期発見ができ、大きな故障を防げます。時計の故障や不具合を放置していると、修理できないほど状態が悪化する場合がありますので、ブランドが推奨する周期でオーバーホールを行い、コンディションを整えるようにしましょう。



こちらの記事に掲載されている価格は、2022年8月現在の情報です。
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