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日本の匠の「物」語り

独自の織り際立つ「工房織座ITO」のストール

17-04-04

大正や昭和初期の旧式織機を改造

“どこにもない織物づくり”を目指し、2005年に愛媛県今治市で創業した工房織座。長年、今治のタオルメーカーで職人として働き、工場長も勤めた武田正利さんが、豊かな経験と知識を活かして、娘の英里子さんとともに始めた工房です。

なかでもストールをメインに販売するブランド「ITO」は、その独特で美しい織りや、まったく新しいデザイン、柔らかくて優しい色や風合いが注目を集め、2016年には海外進出を果たしました。

ITOのもっとも特長的な点は、どこにも存在しない独自の織り。幼いころから機械に慣れ親しんだ武田さんは、この織物を生み出すために、大正や昭和初期の旧式織機を分解、改造しているそう。

たとえば、創業後、最初に誕生した独自の技術「たてよこよろけもじり織り」は、トヨタグループの創業者である豊田佐吉氏から買い取った100年以上前の旧式織機を改造して、生み出したもの。

「筬(おさ)」と呼ばれる、前後に動かして縦糸を整え、横糸を打ち込む部分を、蛇腹のようなジグザグとした形に変更したことで、波のような幾何学模様が出現。また、高速で動く現代織機では実現できない、旧式織機のスローな織りが、柔らかくてふわりとした風合いの織りを可能にしました。

工房織座の技術や発想は世界のどこにもないものであり、武田さんが持つ専門的な知識や技術力、経験が組み合わさることで初めて生まれた、ある種、突然変異のようなものかもしれません。工房織座には、この「たてよこよろけもじり織り」のほかにも、ここにしかない独自の織り技術が数多く存在します。

デザイナーと工芸の化学反応が生み出すもの

デザインや色は、プロに頼むことで、より斬新なデザインになることを期待し、「SPREAD」というデザイナー集団に依頼しています。

まずは武田さんが織機を改造して、新しい織りを考案、そこから娘の英里子さんが製品にする織りを選定し、SPREADにイメージや構想を伝えます。「FOREST」というストールの制作にあたっては、色のインスピレーションを得るため、山登りまでしたそう。

「うちの工房は、多くても1日30本の製作が限度。『どうせ生産量が少ないんだから、リスクを取って冒険してみよう』と思いました。FORESTの織りも、従来なら商品化できないような個性的なものだったし、SPREADさんから提案された色も、ストールにしてはビビッドで驚いたんです。でも、ITOらしい商品になるかもしれないと販売したら、とても人気が出ました。今後も、挑戦や工夫を積み重ねていくことで、デザインやものづくりの好きな人に面白いと感じてもらえるようなアイテムを作っていきたいですね」(武田さん)

すでに「グッドデザイン賞(日本)」や「アジアデザイン賞(香港)」、「レッドドット・デザイン賞(ドイツ)」など多くの賞も受賞しているITO。日々、新しい織りを生み出し続ける武田氏のこれからの活躍が楽しみです。