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伝えたくなる時計の話

時計ケースの王道「SS」より機能的な「チタン」という選択肢

17-11-24

時計のケースに使用される素材には、さまざまな種類があります。

審美性とステイタス性に優れる「ゴールド」や「プラチナ」などの貴金属は、かつて懐中時計が王侯貴族や上流階級のステイタスシンボルだった時代から庶民の憧れでした。一方、最近は特殊な素材を採用して、意外性をアピールする海外ブランドが増えています。たとえば、レーシングマシンにも使用される炭素繊維と合成樹脂を金型に入れて高温で焼き上げる「フォージドカーボン」、あるいは非金属ならではの光沢感が美しい「セラミックス」、経年劣化によるエイジングを楽しめる「ブロンズ」などが話題を集めています。

しかし、これらは時計の個性を強く主張するには適していますが、必ずしも実用的なケース素材としてコストや機能性のバランスが取れているわけではありません。コストパフォーマンスを突き詰めれば、やはり大定番の「ステンレススチール」(SS)と「チタン」(チタニウム)に行き着くのです。

SSは鉄とクロム、ニッケルなどの合金で、クロムが金属表面に薄い酸化被膜を作るため、鉄が直接外気に触れず錆びにくい特性があります。そのためStainLess(錆びない)と命名されたのですが、実際には“錆びにくい”と考えておくのが無難。汗や汚れが表面に付着して塩分(Cl⁻)をそのままにしておくと、酸化被膜を破壊してしまうのです。酸化被膜は数分で自己再生しますが、その前に塩分がまた膜を破壊すると、錆びが発生することになります。SSの中でも最高ランクに位置するSUS316Lは、ニッケルを増やしてモリブデンを添加し、炭素量を減らしているため、かなり錆びにくい素材と言えます。

一方、チタンは希少金属(レアメタル)で、やはり表面に酸化被膜をつくります。それが極めて強力なため、日常的な使用はもちろん、海水につけても錆びないほどの耐食性を誇ります。また、チタンの密度はSSの約60%しかないため軽量で、生体適合性に優れているためアレルギー反応を引き起こしません。チタンが工業用として本格的に活用され始めたのは戦後のことで、まだ歴史が浅く、腕時計への採用は、1973年の国産デジタルウオッチが最初でした。

腕時計の外装用としてこれほど理想的な素材でありながら、チタンが普及面でSSに及ばない理由のひとつは、加工が難しいこと。研磨中に出る金属粉は燃えやすく、また研磨で地金が露出した瞬間にチタンと研磨剤が焼き付き、表面に微小な凸凹が発生して光沢が出しにくいなどのデメリットがあります。シャープなエッジや美しい表面を生み出すには、高度な技術力が要求されるのです。しかし、最近は仕上げ技術の向上によって、SSと見紛うばかりの光沢感を持つチタンウオッチも登場してきました。本来のチタンらしい色合いも“近未来的”と人気は高く、いずれにせよ、「強い、軽い、錆びない」というチタンの3大特性を享受することができます。

実用的で高級感のあるSSだけでなく、機能的なチタンも選択肢に加えれば、いっそう時計の楽しみ方が広がるのは間違いありません。

Knotでは「チタニウムソーラー」シリーズでチタンを初採用。重量はわずか21.5gです