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MUSUBU プロジェクト秘話

【MUSUBUパートナー対談企画】セイショク姫井明氏×Knot遠藤弘満

22-03-01

[THEME 1]「SUSTINO」に込めたKnotならではのコンセプト

―2022年3月、Knotの新シリーズ「SUSTINO(サスティノ)」第1弾として、セイショク株式会社が開発した廃棄される規格外布を加工した新素材「NUNOUS(ニューノス)」のストラップがリリースされます。「SUSTINO」シリーズ立ち上げ、そして「NUNOUS」との出会いについて教えてください。

遠藤弘光(以下遠藤):2017〜2018年あたりから「サステナブル」という言葉が出てきて、最近はまた「SDGs」という言葉も出てきました。ものづくりのメーカーとして、環境問題への取り組みは絶対的に必要になってくる時代です。振り返れば、今から20年ほど前にもリサイクルブームがありましたよね?

姫井明(以下姫井):ありましたね。「リサイクル」や「エコ」という言葉がしきりに飛び交っていました。しかし、それらが根付いたとは言い難いですよね。

遠藤:根付かなかった理由は、結局のところ「リサイクルに取り組んでいます」という企業やメーカーのプロモーション要素が強かったために、消費者が置き去りだったのではないかと思います。本当に良いものを世の中に出さなければ、価値観を変えることはできません今回、Knotのサステナブルへの取り組みとして「SUSTINO」を立ち上げたのですが、このシリーズ名は「SUSTINABLE(サステナブル)」と「INNOVATION(イノベーション)」を組み合わせた造語なんです。つまり、「サステナブル」だけではダメで、お客さまのメリットをしっかりと取り入れた「イノベーション」でなければならない。そう考えていたところに、セイショクが手掛ける廃棄される大量の布から生み出される美しい素材「NUNOUS」に出会い、非常にこれは面白いと感じました。

姫井:ありがとうございます。少し「NUNOUS」が誕生した背景をお話しますと、繊維製造には長い工程があり、我々が担っているのはほんの一部の染色だけなのですが、それでも1日に10〜20反(500〜1000m)もの布が廃棄になります。これをどうにかしたいと、2012年頃からプロジェクトを立ち上げ、技術者からのアドバイスで大量の布を積層してみると断面がすごく美しかったんです。当初は、フォークリフトで重量のあるものを運ぶパレットとして使用するイメージでいたのですが、「この美しいものをそんな使い方をしてはいけない」と思い、汚れても良い場所ではなく、生活の中に溶け込むものとして開発を進めたいとシフトしました。遠藤社長の仰る通り、我々も「NUNOUS」をプレゼンテーションする際に、まずはものを見て「美しい」「欲しい」と感じていただくことを大切にしています。「美しい」と思ってもらえたら、「実はサステナブルな素材なんですよ」と付加価値のように伝えます。

遠藤:消費者が「サステナブルなものだから買う」ことは考えにくく、あくまでも、その商品や価格が、環境に配慮されていない商品と比べて遜色がないことが前提ですよね。そこは勘違いしてはいけないところだと思います。

[THEME 3] 革新的な挑戦と素材のコラボレーション。唯一無二のストラップ「NUNOUS」誕生

―「SUSTINO」コレクションのファーストモデル「NUNOUS」は新素材のストラップということでも注目が集まると思いますが、どのような魅力を秘めているのでしょうか?

遠藤:最初に「NUNOUS」を見たとき、石のような硬さに驚き、その断面の美しさに惹かれました。この硬さをいかして、くり抜いてケース(側)にしたり、文字板に使えるのではないかとも考えたのですが、湿度などで多少でも歪みが発生すると故障に繋がりますし、金属の代用として使用するには難しかったですね。

姫井:遠藤社長は積層面にすごく惹かれていらっしゃいましたから、なんとか形にできないかと色々やってみたのですが、やはりもとが糸なので精密な加工が難しい。それをお伝えすると、すぐに「ではストラップにしよう」と切り替えていただきましたよね。今日、完成したストラップを見て単純に美しい、欲しいと思いました。

遠藤:綺麗ですよね。結果的にストラップにして正解でした。しっかりと「NUNOUS」の美しさが表現できています。加えて、Knotの腕時計は年間7〜107~8万個を販売しますが、すでに愛用されているユーザーが60〜70万人世界中に50万人以上いらっしゃいます。腕時計の素材に使った場合、新しいユーザーに「NUNOUS」の魅力を伝えることはできますが、既存のユーザーが2つ目、3つ目の腕時計本体を購入するケースは稀です。ところが、ストラップだと60〜70万人50万人以上のユーザー全員に「NUNOUS」を紹介できます。

姫井:「NUNOUS」は、ふたつとして同じ柄がないのも面白いところで、Knotのストラップも1本ずつそこにしかない柄です。ニュアンスの違いを見て選ぶのも楽しいですよね。

遠藤:工業製品というのは、全て同じ品質・クオリティ・デザインでつくるというのが使命です。「違っていい」という考え方は、相反するものなのですが、オリジナリティを求めてKnotを愛用してくださるユーザーにとっては、むしろ魅力的に映るのではないかと思います。

姫井:「NUNOUS」は他にない素材なので、実際に見て、触っていただくと、布からできていることがすぐに伝わるのですが、写真で見るとプリントした布にも、プラスチックにも見えてしまうんですよね。その点、Knotはしっかりと製品の魅力を伝えるリアルショップを展開されていますし、僕も実際に店頭に伺って「こういうお店に置いていただけるなら、NUNOUSの魅力をきちんと伝えていただけるはずだ」と思いました。

遠藤:Knotは時計というプロダクトと一緒にカスタムオーダーで「選ぶ」楽しい時間を提供しているブランドです。お店でその体験をしてユーザーになったお客様が、リピートでオンラインを利用されるケースが多いんですね。今回の「NUNOUS」の場合は、取り組みであったり、ストーリーであったり、きちんと理解していただくことが大切だと感じています。そして「この硬いキューブがどうやってストラップになったの?」という驚きも味わってもらいたい。そこが伝わってはじめて、「自分が欲しいもの」と「問題意識」との天秤のバランスが取れるように思います。

姫井:弊社の工場にも若いスタッフが多いので、みんな欲しがりますね。さらに、このストラップが自分たちの工場から生まれた生地、新素材の「NUNOUS」でできていると知ったら、喜んでくれると思います。本業である染色業は主に作業服に使われるので、「カッコいい」とか「お洒落」とはちょっと違うところにありますが、同じ元の素材を使ってこうしたお洒落なストラップにしていただけたことは革新的です。

遠藤:つくり手の方々が、自分たちの仕事に対して喜びや誇りを再認識していただけるところも、Knotの取り組みの良い一面ではないかなと思います。また、「NUNOUS」はこれまでホテルなどの壁面やテーブルなど、建材として使われていましたが、時計のストラップにすることで、ファッションという非常に身近なものに取り入れることができる。「NUNOUS」を一般消費者に周知して、そのことがきっかけで新しいビジネスが広がったり、売上貢献のお手伝いができればと考えています。

姫井:Knotのユーザーである若く、これから社会を担う世代に向けたものにもなっていますし、そういう人たちにぜひ手にとってもらいたいですね。

[THEME 3] Knotにしかできないプロダクトでメッセージを届け、つくり手を繋ぐ

―「MUSUBUプロジェクト」で誕生したプロダクトはどれも魅力的なプロダクトでありながら、強いメッセージ性を感じます。今回の「NUNOUS」で、さらに新しい扉が開いたように思うのですが、「SUSTINO」コレクションは、今後どのように展開していくのでしょうか?

遠藤:サステナブルにはふたつの方向性があると考えていて、ひとつは「ゴミを出さない」という取り組み。もうひとつは「再利用する」という取り組み。ここにとくにこだわりはなくて、どちらのアプローチにしても環境問題に対する企業の取り組みになればいい。絶対的に必要なことは、お客さまにメリットがあるということです。お客さまの負担によって、環境問題に対する取り組みが成立するようでは、広まっていきません。それは、「人と人、人とものとを結ぶ」という意味を込めた「knot」の社名にも行き着くのですが、そういうことに注力して可能な限りコレクションを増やしていければと思っています。今回、「SASTINO」コレクションのファーストモデルとしてストラップは「NUNOUS」、そして腕時計本体は薄さ数ミリの新ソーラーを採用したバッテリーレスのものをリリースします。

姫井:「NUNOUS」はまだ生まれたばかりのブランドなので、認知度は高くありません。まずは今回、ストラップにしていただいたことで手に取りやすく、身近な存在になると期待しています。こうした取り組みを今後も広げていって、ひとりでも多くの方に知ってもらいたい。廃棄される布に関しては、我々の工場だけではなく、他の企業やブランドも抱える問題です。廃棄される洋服や製品からも「NUNOUS」ができるような取り組みも行っていきたいなと考えています。

遠藤:工場を拝見しながら新しいアイデアが次々と浮かびました。Knotは腕時計だけでなく、財布や小物など他のコレクションも展開しています。そういうものの開発も考えていきたいですね。また、おかげさまで「MUSUBUプロジェクト」のパートナーさん同士で新しい繋がりやビジネス、プロダクトも誕生しています。例えば、バッグメーカーのパートーナーさんが「NUNOUSを使って鞄をつくりたい」と、そういった広がりが生まれたらいいですね。

姫井:Knotの取り組みやコンセプトに共感する者同士、どこか根底で繋がっている気がしますね。そして感度の高いKnotユーザーさんにも同じことが言えるように思います。

遠藤:「NUNOUS」は本当に可能性が広がる、ワクワクする素材です。今回は本当に良い経験になりました。

姫井:こちらこそありがとうございました。