TOP > 伝えたくなる時計の話 > 真夏の腕時計デイリーケア

伝えたくなる時計の話

真夏の腕時計デイリーケア

17-08-15

うだるように暑い日が続く夏は、汗や皮脂汚れ、砂塵や海水など、腕時計にとってもハードな季節。ダメージを受けた時計には、一刻も早いアフターケアが必要です。

そもそも湿気の多い日本の夏、肌に直接触れるブレスレットやストラップには、メタルのメッシュブレスやファブリック系ストラップに付け替えておくのが賢明です。汗でベトベトになっても、これなら取り外して水洗いすれば大丈夫。メッシュ形状なら熱や湿気が装着部にこもるのも防いでくれます。

レザーストラップの場合は、ブレスレットのような水洗いは禁物。革素材は水に弱く、色むらができたり、ごわごわに硬化したり、内部の繊維組織に浸透した水気がカビ発生をうながすこともあるのです。

では、どのようにケアするべきでしょうか? まずは、柔らかいクロス類を上からそっと押し当て、拭くのではなく汚れや水気を布地に吸い取らせるようにしましょう。そして、日陰の風通しのよい場所で、1~2日かけて自然乾燥させれば、革の傷みや臭いの発生もたいていは未然に防ぐことができます。

革ストラップ用の除菌・防臭ケアスプレーを使うのも効果的ですが、間違っても合成洗剤やアルコール類、汚れ落とし用のスプレーやクリーナーは使わないこと。革ストラップ表面の保護コーティングを溶解して、色むらや変色につながる恐れがあります。

早く乾かしたいからといって、ドライヤーやコンロの直火で急激に乾燥させるのも厳禁です。革の繊維組織が収縮&硬化して、やはりごわごわになってしまいます。また、水気が残ったまま着用を続けると、雑菌が繁殖して傷みや臭いの原因になるので、予備のストラップを用意して“汗をかいた”と感じたら適度に付け替えるよう心がけましょう。メタルブレスレットと違って、レザーストラップは数年使い続けるとダメになる消耗品ですが、少しでも長持ちさせるには“休ませる”ことが大切なのです。

ケース回りに付着した汗が気になる場合でも、安易な水拭きはNGです。気づかないうちにパッキン素材が劣化して、時計内部に水が浸入してしまった……という可能性もゼロとは言い切れないからです。やはりケースも「乾拭き」を徹底しましょう。ブレスレットとの接続部やリューズの根本回りなどに溜まった汚れは、綿棒や爪楊枝、柔らかめの歯ブラシでかき出せば、きれいに落とせます。

また、高温や低温には決して強くない腕時計ですが、日本にいるかぎり、真夏日でも気温は気にせず、いつもの保管場所で大丈夫です。ただし、強い日差しに当たり続けると文字盤が紫外線で退色したり、内部の機械油やダイヤル塗料が高温で劣化することもあるので、直射日光は避けましょう。たとえば炎天下にとめたクルマのダッシュボードに置きっぱなしにすると……もう、想像するだけで寒気がしてきそうです。



こちらの記事に掲載されている価格は、2022年8月現在の情報です。
最新情報は Maker's Watch Knot 公式サイト をご覧ください。

この記事の関連商品

プロフィール 大野高広
出版社を経て、編集プロダクション「オフィスペロポー」主宰。雑誌・書籍・広告の制作を行いつつ、15年以上にわたりスイス時計フェアの取材を重ね、時計ジャーナリストとして専門誌・一般誌に執筆中。